ブログ > ゼロからわかる 路面標示入門 > 路面標示デザインの考え方 [材料・施工編]

路面標示デザインの考え方 [材料・施工編]

初稿日:2025.08.07

更新日:2025.08.07

道路に描かれている「止まれ」や矢印、横断歩道のような路面標示。

普段、当たり前のように見かけるこれらの標示は、

実は私たちの安全やスムーズな移動を支える大切な役割を担っています。

今回は、いつも何気なく見ている路面標示の「材料」や「施工方法」といった、

あまり知られていない裏側を、なるべくわかりやすくお伝えします。
ご覧いただくことで、身近な道路の見え方が少し変わるかもしれません。

 

1.路面標示ができるまで

 

一見シンプルに見える

道路の文字やマークも、

設置場所の状況や、そこを通る人

(歩行者、自転車、車など)に考慮して

「見やすく、伝わりやすい」

デザインに仕上げていきます。

しかし、デザインだけでは

完成とは言えません。

 

どれだけ優れたデザインであっても

それが実際の道路に

正しく施工されなければ

本来の効果を発揮する

ことはできないのです。

 

2.よく使われる材料について

路面標示を施工するには、様々な材料・工法があります。
一般的に5~7人ほどのチーム(施工班)で、各工程を分担して進めます。
施工には専用の機械を使用し、施工規模に応じて大型機械を用いる場合もあります。
いずれの場合も、熟練の職人が機械を操作し、

施工場所の状況に応じて手順を細かく計画したうえで作業を行っています。

ここでは代表的な工法を 3つ ご紹介します。(※下記以外の工法もあります。)

– – – – 溶 融 式 工 法  – – – –

ようゆうしきこうほう

材料の粉を高い温度

(約180~200℃)で

ドロドロに溶かして、

専用の機械で厚く

約1.5mm)しっかり塗ります。

施工後すぐに冷えて固まります。
現在、路面標示の約80%が

溶融式工法で施工されています。

 

    特徴  耐久性が高く、雨や摩耗に強い

 

– – – –  ペイント 工 法  (常温式・加熱式)- – – –

ペイントこうほう(じょうおんしき・かねつしき)

液体の塗料をスプレーのように

吹き付ける工法で、

常温式と加熱式があります。
常温式はそのまま施工できる塗料で、

加熱式は塗装に適した粘度

(約50~80℃)に加熱して施工します。

 

 

 

特徴 : 長い距離の施工に適している

 

 

– – – –  シート 工 法 (常温接着・加熱接着) – – – –

シートこうほう(じょうおんせっちゃく・かねつせっちゃく)

 

シート状に成型した

文字やマーク等を道路に貼り付ける工法で、

ゴムハンマーで叩いて貼る

常温接着と、

バーナーであぶって貼り付ける

加熱式接着があります。

 

 

どちらも細かい文字や記号、

多彩なグラフィック表示を薄いシート状にまとめた標示材を、路面に貼り付けて使用します。

 

 

 

特徴 : 見た目がキレイ

 

 


 

3.どうやって施工されるの?


材料が決まったら、いよいよ施工です。

以下の手順が一般的です。

 

1:清掃

2:下地処理

3:作図(位置決め)

4:施工

5:養生(乾燥させる・冷ます)

 

施工では職人さんが手作業で描くこともあり、まっすぐな線を引く・文字のバランスを整えるなど、実はとても繊細な作業なのです。

4.気温や天気で変わる作業内容

実は、路面標示の施工は天気や気温の影響を大きく受けます。

雨の日には作業ができないことも多く、

天気予報を見ながら作業日を調整します。

また、ペイント工法(加熱式)の材料は、

気温が低いと固まりやすくなるため、

施工のタイミングに注意が必要など、

夏と冬で材料の使い方・乾き方も変わってくるため、

職人さんは経験をもとに判断しています。

 

5.さいごに

 

今回は、普段あまり意識することのない路面標示の「材料」や「施工方法」についてご紹介しました。

 

道路に描かれた標示が私たちの安全を守ってくれる背景には、材料選びや丁寧な施工といった多くの工夫と努力があります。

 

これから道路を歩いたり車を運転したりするとき、少しだけでも標示に目を向けてみてください。

 

その一つひとつに、誰かの安全を思う気持ちが込められています。